これから国際結婚をするという場合、選挙権や被選挙権について気になりませんか?
- 日本で生活する場合の、外国人の参政権
- 海外で生活する場合の、日本人の参政権
一般的に日本人は参政意識が高くないですが、外国人(特に欧米諸国)は政治に関する意識が高い人が多いです。
国際結婚をする際に、選挙権や被選挙権について尋ねられる可能性もあります。その時に、「何も知らない、分からない」というのは、ちょっと問題ですよね。
今回の記事は、外国人の選挙権・被選挙権についてまとめました。
公務員への就職や、裁判員への選出などについても触れています。
国際結婚をするならば、かならず知っておきたい内容ばかりですよ。
1.日本における外国人参政権(選挙権・被選挙権など)
ここでは、国際結婚して日本に住むことになる外国人に、スポットを当てていきます。
はたして日本に住む外国人の参政権は、どのようになっているのでしょうか?
(1)外国人に選挙権と被選挙権はありません
選挙権や被選挙権については、日本国籍者の固有権利とされています。
従って、外国人には、選挙権も被選挙権もありません。
日本国憲法において、以下のような定めがありますので、ぜひ知っておきましょう。
第15条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。(日本国憲法)
(2)永住権(永住ビザ)を取得した外国人は?
それでは、日本での生活が長く、永住権(永住ビザ)を取得した外国人はどうでしょうか?
永住権を取得した外国人の日常生活は、日本人とほとんど変わらないですよね。
日本での生活は長いですし、日本語も堪能です。ひょっとしたら選挙権や被選挙権があると、期待する外国人もいるかも知れません。
しかし、選挙権や被選挙権を考えるうえで重要なのは、やっぱり「国籍」なんですね。
いくら永住者といえども、日本国籍ではありませんから、選挙権も被選挙権も有しません。
一般の永住者だけではなく、特別永住者に関しても同様の取り扱いになります。
(3)帰化申請をした外国人は?
どうしても、日本の参政権を取得したければ、帰化申請をして許可される必要があります。
帰化とは、日本国籍を取得することです。
帰化申請をして、申請が許可されれば、日本国籍が取得できます。それによって、日本での選挙権と被選挙権を有することができるのです。
ただし、日本は二重国籍を認めていませんから、元々の外国籍は放棄しなければいけません。
また、帰化申請が許可されるまで、1~2年という長い期間がかかります。それなりに覚悟が必要になりますよ。
(4)日本で税金を納めているのに…
「日本に税金を納めているのに、選挙権がないのは外国人差別だ」
もしも、パートナーの方がこの様なことをおっしゃったら、あなたはどのような答えを返しますか? 答えに困ってしまうという人も、多いのではないでしょうか?
まず知っておきたいのは、税金は「公共サービスの対価」としての性格をもっているということです。
税金によって交通網などのインフラが整備され、そのサービスを日本で生活する人が享受している、という解釈ですね。
税金を公共サービスの対価と考えれば、日本で生活する以上、日本へ税金を支払うのは当たり前のことなのです。国籍は関係ないことがお判りいただけるでしょう。
外国人パートナーにお伝えすれば、感情的に納得できなくても、理屈としては理解してもらえると思います。
◆ 国民健康保険の支払いをしてるのに…
中には、「死ぬまで日本にいるわけでもないのに、国民健康保険料を支払っている。でも、選挙権がないのはおかしい」という外国人もいるかもしれません。
国民健康保険の老齢基礎年金を受け取らなくても、日本にいる間、「障害基礎年金」の保険サービスは受けています。
また、将来的に帰国したのであれば、「脱退一時金」という制度もあります。
税金と同じく社会保険も、選挙権と絡めることにはムリがあるのです。外国人参政権を認めるかどうかは、まったく別の観点からの議論(例えば安全保障面の観点など)が必要なんですよ。
2.将来的に外国人参政権が認められる可能性はある?
ここでは、将来的に外国人参政権が認められる可能性について、まとめました。
(1)外国人参政権が認められる可能性はある?
将来的に外国人参政権が認められる可能性はあるのでしょうか?
結論から言うと「地方参政権が認められる可能性はあります」。
第15条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。(日本国憲法)
たしかにその通りです。
ただし、日本国憲法では「国と公共団体」のうち、公共団体については『お上(国)があれこれ口出しするよりも、事情を知っている住民自身が自治した方が良い』という「地方自治」の考え方も基礎としています。
第92条 地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。(日本国憲法)
ここまでの説明を聞いて、次の文章を読んでみてください。あなたはどのような感想をお持ちになりますか?※文章の解説は、次のブロックで詳しく行います。
- 選挙権が国民固有の権利なら、国・地方を問わず、外国人に選挙権を認めるべきではないね。
- でも、地方自治の観点からは、永住権を持った外国人に、地方参政権を認めてもいいのでは?
(2)外国人参政権と地方自治
先ほどの意見を見て「なるほど!」と思った人や、「あり得ないよ!」と思った人など、色んな意見をお持ちの方がいると思います。
実は、外国人参政権と地方自治については、最高裁判所の有名な判決(H7.2.28)がありますので、一部抜粋してご紹介しますね。
「永住者等は、居住区域である地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められる者である。その意思を反映させるべく、「新たに法律」を作って、地方選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されない」(一部抜粋・編集)
難しい言い回しですが、どういう内容か、ぼんやりとは理解できたと思います。
この判決で最高裁は、「『外国人永住者等』に『地方参政権を付与する法律』を国会が作っても、それは憲法違反ではない」と示しているんですよ。
違憲審査権を持つ裁判所が、このような判決を下したことは、とても大きな意味を持ちます。国会審議で外国人の地方参政権を認める法律を成立させれば、永住者や特別永住者(主に在日韓国人の方)の外国人参政権が認められることになるのですからね。
はたして、外国人の地方参政権を認める法律を作ろうとする動きが、実際に活発化した時期がありました。それが民主党が政権を担った時代のお話です。
詳しい内容はわからなくても、「外国人参政権」というキーワードが耳に残っている人も多いのではないでしょうか?
3.これ以外に日本在住の外国人が知っておくべきこと
(1)外国人も住民投票には参加できるケースがある
ここまで、外国人には参政権がないとお伝えしてきました。
しかし「公職選挙法の適用がない選挙」には、国籍条項(国籍に関する制限)がありません。地方自治体の住民投票では、外国人の参加が認められていることがあります。
(2)公務員について
憲法や法律に明記されてはいませんが、原則として外国人が国家公務員になることはできません。
地方公務員に関しては、外国人が地方公務員として任用されることもあります。ただし、出世に関する制限が課される可能性が高く、実質的な公務員業務に携わることができない(事務処理だけ行う)恐れがあるのです。
なお、外国人に関してこのような制限を課すことについては、違憲ではないとする最高裁の判例があります。
(3)裁判員制度への参加について
日本には裁判員制度(アメリカでいう陪審員制度)がありますよね。
残念ながら、外国人は裁判員になることはできません。
第十三条 裁判員は、衆議院議員の選挙権を有する者の中から、この節の定めるところにより、選任するものとする。(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律)
4.海外における日本人の参政権(選挙権・被選挙権)
(1)選挙権と被選挙権はありません
これは、日本における外国人に対する考え方と全く同じです。
つまり、日本人が海外に移住しても、選挙権や被選挙権が与えられることはありません。
現地の外国人と国際結婚しているか否かは関係なく、あなたの国籍で判断されます。
(2)永住権と市民権(帰化)
国によりますが、長くその国に滞在して、その他の要件をみたすと、「永住権」や「市民権」を取得できるようになります。
永住権の場合には、国籍は変わりませんので、外国の選挙権や被選挙権を得ることはできません(その代わり、日本での参政権は保有し続けています)。
一方、市民権の場合には、その国の国籍を取得することになります。この場合には、市民権を取得した国の選挙権や被選挙権を得ることができます。
(3)日本は二重国籍を禁止しています
日本では、実質的に重国籍状態を禁止(生まれながらにして重国籍の場合には、22歳までにいずれかの国籍を選択する)しています。
なお、自発的に日本国籍以外の国籍を取得した場合には、日本国籍を喪失します。
つまり、外国の市民権を獲得した場合、日本国籍を喪失することになります。
第十一条 日本国民は、自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う。(国籍法より)
国際結婚と選挙権について ~まとめ~
いかがでしたか?
今回は外国人と居住国の選挙権・被選挙権の関係について説明しました。
原則として、その国の国籍を取得しなければ、その国の選挙に参加することはできないというのが結論になります。
選挙権だけの話ではなく、公務員への就職や、裁判員への選任など、影響を受ける部分がありますので、そこまで含めてパートナーの方に説明できれば良いですね。
今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございました!