外国人に身元保証人を依頼されたことで、ビックリしてしまった方も多いでしょう。
恐らく、ほとんどの方が躊躇するでしょうし、その理由は「借金の肩代わりをするの!?」という警戒心からだと思います。
最初に結論から言ってしまうと、責任やリスクはほぼありませんのでご安心ください!
…とはいっても、責任やリスクがまったくないというわけではありません。
この記事では、永住ビザの身元保証人の責任とリスクを中心に、解説していきます。
1.永住ビザの保証人をあなたにお願いした理由
永住ビザを申請するにあたって、なぜその外国人が”あなた”に依頼してきたのか?
そもそもの話として、やっぱり気になりますよね!
まずは、外国人があなたに保証人を依頼してきた背景を説明します。
(1)永住ビザ申請における身元保証人の位置づけ
永住ビザを申請するにあたっては、かならず「身元保証人」が必要です。
厳密にいえば、身元保証人を用意しなくても申請はできるのですが、その場合、永住ビザの申請は間違いなく不許可になるでしょう。
今まで長いこと日本に在留して、これからも日本に生活基盤を持とうとするのだから、身元保証人くらい用意できるでしょ?というのが、国のスタンスです。
(2)永住ビザの身元保証人になれる人
永住ビザ申請における身元保証人を要求しているのは、出入国管理及び難民認定法(入管法)という法令です。
入管法上の身元保証人として認められているのは、次の2パターンになります。
- 在留資格「永住者」を取得している外国人
- 日本人
①在留資格「永住者」を取得している外国人
「どうして知り合いの外国人に頼まないんだろう?」
この様に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、身元保証人になれる外国人は「永住ビザ」を持っている人だけ。
ところが、永住ビザを持っている外国人は、それほど多くありません。
あなたに依頼してきた外国人の回りには、おそらく永住ビザを持っている人がいなかったのでしょう。
②日本人
日本人であれば、だれでも入管法上の身元保証人になることができます。
その外国人が日本人と結婚しているのであれば、その配偶者の方に依頼しているはずです。
日本人と結婚していない場合には、「一番頼れる日本人」に、身元保証人を依頼します。
もっとも多いのが、働いている外国人が、会社の上司(社長)にお願いするパターン。二番目に多いのが、元・留学生が大学時代の恩師にお願いするパターンです。
◆ 保証人代行サービスはどうなの?
保証人代行サービスというものがありますが、決して外国人には勧めないでください。バレれば間違いなく不許可につながります。
永住ビザの身元保証人ですが、「日本で生活してきて、これからも生活するのなら、保証人くらい用意できるでしょ?」というニュアンスが強いです。
用意できない≒不許可ということを理解していただければ、保証人代行サービスを利用するリスクはご理解いただけると思います。
(3)あなたはその外国人から、信頼されています
この様に考えれば、あなたはその外国人から、相当信頼されていることが分かります。
また、あなたに身元保証人を断られると、その外国人は途方に暮れることも分かっていただけると思います。
よほどの事情がなければ、まずは、身元保証人を引き受ける方向で、考えてみてください。
2.永住ビザの身元保証人が負うべき責任
ここでは、入管法上の身元保証人がどのようなものなのか、詳しく解説していきます。
特に、身元保証人がどのような責任を負うのかについて確認してください。
(1)借金の連帯保証人とは違う
入管法上の身元保証人が嫌がられる理由として、借金の連帯保証人と勘違いされることが挙げられます。
借金の連帯保証人とは、民法上の保証人のことで、入管法上の身元保証人とは、まったくの別物です。
民法の保証人と、入管法の保証人について、簡単にまとめた図解です。
(2)永住ビザの身元保証人が負うべき責任
①保証内容
入管法上の身元保証人が保証する内容は、以下の3つになります。
- 外国人の、日本での滞在費について経済的保証
- 外国人の、日本からの帰国旅費について経済的保証
- 外国人の、日本法令の遵守について生活指導
大きく分けると、経済的保証と生活面支援になります。
簡単にいえば、外国人に対する金銭面の肩代わりをしたり、法令遵守に関して指導したりする可能性があるということですね。
②責任形態
あなたが負う責任は、「道義的責任」です。
出入国在留管理庁のHPには、次のような内容が書かれていますよ。
身元保証書の性格について,法務大臣に約束する保証事項について身元保証人に対する法的な強制力はなく,保証事項を履行しない場合でも当局からの約束の履行を指導するにとどまりますが,その場合,身元保証人として十分な責任が果たされないとして,それ以降の入国・在留申請において身元保証人としての適格性を欠くとされるなど社会的信用を失うことから,いわば道義的責任を課すものであるといえます。(出入国在留管理庁「Q&A」より引用)
道義的責任とは、ルールを守らなかった場合、法的な制裁を加えられるほどではないが、社会的・倫理的な規範に照らすと、ルール違反として非難されるべき責任ということです。
このウソツキ!と、法務大臣(保証書の提出先)から思われるだけということです。
入管法上の身元保証人の責任内容について、まとめると以下のようになります。
(約束した以上)入管法上の保証人は、滞在費等について保証すべきです。
(でも、道義的責任なので)保証にかかる法的な履行義務はありません。
◆ 民法上の連帯保証人の責任内容について
民法上の連帯保証人は、法的責任を負います。
法的責任を負っていますから、債権者が連帯保証人に対して債務の履行を迫った場合、連帯保証人はこれを拒否することは、法的に認められないのです。
民法の保証人は、法的責任。入管法の保証人は、道義的責任という点で異なります。
3.保証人としての責任を果たせない場合のリスク
「ウソツキ」と思われるくらい、大したことないかもしれませんが(笑)、実はこれによって明確に悪影響を受けることがあります。
それは、次に入管法上の保証人になるハードルが上がる(信用力が下がる)、ということです。
入管法上の保証人は、永住ビザ申請だけでなく、様々な場面で要求されます
もしも、入管法上の保証人としての信用力が低下したり、保証人として認められない場合、どのような不都合が生じるのでしょうか?
事例1 ビザが必要な国からの外国人招聘が難しくなる
ビザが必要な国から外国人を呼び寄せる場合には、招聘状が必要になりますが、この場合にも入管法上の「保証人」を立てる必要があります。
あなたが保証人になれない場合、以下のような不都合が生じる可能性があります。
- あなたの外国人親族を、日本に招聘することが難しくなる
- 外国人をビジネス目的で日本に招聘することが難しくなる
事例2 身分系在留資格の保証人になることが難しくなる
身分に基づく在留資格(永住者・定住者・日本人の配偶者等など)に関する申請は、身元保証人を用意する必要があります。
あなたの職場に外国人が多い場合には、今後も永住ビザの保証人を依頼されるがありますよね?他にも、定住ビザの保証人を依頼されることだってあるかも知れません。
その場合、あなたが道義的責任を果たしていない記録が出入国在留管理庁に残っていますので、身元保証人としての能力が疑問視されますし、最悪、保証人になってあげることができなくなります(不許可ににつながるため)。
以上、2つの事例を通じてお伝えしましたが、これが身元保証人の道義的責任を放棄した場合のリスクです。
4.身元保証人の辞任届
身元保証人となってあげた外国人と、疎遠になることも考えられますよね。
あなたの会社を外国人が退職することもあるでしょうし、ケンカ別れということもあるでしょう。
このような場合、出入国在留管理庁に身元保証人の辞任届を提出することができます。
5.永住ビザの保証人になるリスク ~まとめ~
いかがでしたか?
この記事では、入管法上の身元保証人が負うべき責任と、保証人を引き受けたときのリスクについて説明しました。
保証人を引き受けるリスクですが、「ほぼ」ありませんというのが結論です。
海外から外国人を招聘する機会が多い人は、ほんの少しリスクがあるというくらいですね。
外国人の方も、だれに頼んでよいのか困っている状況で、あなたに身元保証人のお願いをしてきているはずです。
今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございました!