外国人と結婚したいけど、日本語はどれくらい上達するの?
もしも、日本で生活するのでしたら、外国人とのコミュニケーションは、日本語になる可能性が高いですよね。
そこで気になってくるのが、外国人の日本語能力についてです。
- まったく日本語を話せない人が、日常会話レベルの日本語力を習得するのに必要な時間は?
- 日本語力は時間がたてばたつほど向上するの?ネイティブ並みになるの?
この記事では、外国人ビジネスマンと交流深い日本語教師が、経験から感じる外国人の日本語力について、解説していきます。
◆ ネイティブ並みの日本語力に到達するかどうかについてお伝えします。
◆ 発音の重要性について考察します。
◆ 母語によって、日本語発音の特徴が変わるんですよ。
国際結婚しようと思ったとき、ひょっとしたら未来の妻に日本語を教えることになるかも! と思って取得しました。
教壇に立ったことはありませんが、いちおう有資格者です。
1.外国人は日本人並みに日本語が話せる?
(1)ネイティブと同レベルに到達は可能
「この人の日本語は、日本人と区別がつかないな…」と思った外国人が、過去3人だけいました。
普通にこの人たちと会話をしても、外国人だとは気づきません。
時折「てにをは」がおかしかったり、一瞬イントネーションが違ったりしますが、外国人だと言われなければ、違和感を感じないレベルです。
ただ、このレベルまで到達できる人は、ちょっと特殊だと感じます。
- トライリンガルやマルチリンガルが多い
- 非常に地頭が優れている
- 言語学習に対して妥協がない
①トライリンガルやマルチリンガルが多い
言語学習に対する免疫があるというのは、とても大きい要素です。
なぜならば、どのように言語を学習すれば上達できるのか、ポイントが分かっているからです。
よく、「バイリンガルになれれば、トライリンガルになるのも簡単だ」と言われます。これは、初めて外国語を学び習熟することの難しさを表す言葉です。
TOEICのスコアを聞いたら、みなさん900overでした。やっぱりな、という感じですね。
②③非常に地頭が優れている・言語学習に妥協がない
その方たちと話していて、とても頭の回転が速い印象を受けました。
そして、なによりも新しいことや学ぶことが大好きなのだと感じます。非常にチャレンジングな方たちなんですよね。
だからこそ言語学習にも妥協がないのでしょう。一人の中国人女性はこんなことをおっしゃっています。
…これ、すごいことですよ。
普通、ある程度の自信がついてくると、他人から指摘されることを嫌がる人が多いんです。それを自分からお願いしていたんですから、素直にすごいな、と思いますね。
(2)普通の外国人は、ネイティブレベルまで到達しない
先ほど、ネイティブとほぼ変わらないレベルの外国人がいることを紹介しました。
しかし、そのレベルに到達するには、単純に時間だけではなく、本人の並々ならぬ努力と、語学に対する素養も必要であることが分かると思います。
多くの外国人は、残念ながら、ネイティブと同等レベルの日本語力には到達しません。「てにをは」や発音、イントネーションなど、外国人とわかるレベルにとどまります。
ただ、ほとんどの外国人が、日本語で考え、日本語で理解するというレベルには到達しますから、意思疎通をするにはまったく問題がない日本語力と言えるでしょう。
2.外国人の日本語力は最低限どのレベル?
(1)日常会話レベルまでは、普通にできるようになる
通常、外国人は日本語学校という語学学校に通学し、日本語を学びます。
日本にある日本語学校の場合、月曜から金曜日の午前中にだけ授業があり、午後からは自由行動という場合がほとんどです。
まじめに日本語学校に通学をして、日本語を勉強した場合、日常会話レベルに達するには、半年~1年もあればお釣りがくるでしょう。
この辺りまでは、時間と能力が正比例する関係にあります。
(2)日常会話レベルより上は、個人差がある
日常会話レベルまでであれば、どんな学習者であっても、そこまで大きな習得時間の差が生じることはありません。
ところが、よく観察すると、この時点で到達レベルにはかなりの差が生じており、この後の能力の伸び方に影響を及ぼします。
- 発音について正確に発音しようとする姿勢があるかどうか
- 言い回しについて口癖がついているかどうか
- 単語を正確に暗記しているかどうか
言語学習に関する方法論で、「発音は気にしないこと」ということを強調しているケースがありますが、これは大変危険な考え方だと思います。
なぜならば、言語習得と発音には、かなり強い相関関係が認められるためです。
(3)一定以上のレベルになるためには、正確な発音が必須
正確な発音ができないということは、正確なリスニングがしづらいということ。
そして、正確なリスニングがしづらいということは、少なからずコミュニケーションにラグが生じるということ。
そうすると、コミュニケーションをとることで余裕がなくなってしまい、正しい文法や助詞の使い方にまで、頭が回らなくなってしまうのです。
発音悪い ☞ 文法がおろそかになる ☞ 助詞の使い方がうまくならない
ほかにも、正確な発音ができないと、次のようなデメリットも生じます。
- 日本語を話すたびに”口”が疲れてしまう
- ネイティブに内容が伝わらず、嫌気がさしてしまう
好きこそものの上手なれ! という通り、正確な発音ができないと、一定以上の水準からは日本語力が成長しづらくなるでしょう。
3.外国人の日本語力を測定する試験=JLPT
ここまで、外国人の日本語力について、お話してきましたが、実は、外国人の日本語力を測定するための試験があります。
「日本語能力試験」というもので、通称「JLPT(Japanese Language Proficiency Test)」と呼ばれます。
(1)日本語能力試験(JLPT)とは?
日本語能力試験(JLPT)とは、日本語を母語としない人の日本語力を測定する試験としては、世界最大規模で行われています。
年2回(7月、12月)実施され、日本のみならず、海外でも受験することが可能です。
2017年時点では、日本を含む世界81ヵ国で実施され、年間受験者数は延べ約90万人となっています。
ビザ(在留資格)の取得条件や、留学生の進学条件にもなっていますので、外国人にとって、日本語能力試験の受験は、必須という位置づけになります。
(2)日本語能力試験(JLPT)の内容
N5から始まり、N1を最上位としたテストになります。
TOEICのようなスコア評価ではなく、英検のように各クラスが分かれ、その中で合否を判定するテスト形式です。
ちなみに、N5からN1のそれぞれのレベルは、以下の通りです。(引用:公式webサイト)
- N5 基本的な日本語をある程度理解することができる
- N4 基本的な日本語を理解することができる
- N3 日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる
- N2 日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる
- N1 幅広い場面で使われる日本語を理解することができる
…よくわからないと思いますので、もう少しイメージがつく説明をしましょう。
- N5/N4 スムーズな意思疎通は難しいレベル
- N3 日常会話なら、ある程度普通に会話が成立するレベル
- N2 専門学校に進学できるレベル
- N1 大学・大学院に進学できるレベル(日本企業就職レベル)
(3)日本語能力試験(JLPT)の問題点
日本語能力試験(JLPT)には、ある問題点が指摘されています。
それは、「読む」「聞く」というスキルしか、測定していないことです。
一般的に言語を操るためには、4技能(読む・聞く・話す・書く)が必要ですが、そのうち、2つの技能しか測定していないわけです。
特に、コミュニケーションで必要となる、「話す=スピーキング能力」を測定していないため、N1だからといって、日本語が堪能かといわれると、必ずしもそうではないことがあり得るのです。
中国の人は、常日頃から漢字に慣れ親しんでいますので、「読む」に関しては、あまり勉強しなくても、N3~N2くらいまでは取れてしまいます。
一方で、非漢字圏の外国人は、まずは漢字に慣れることから始めなければいけませんので、同じN3やN2を取得するのにも、大変な労力を要します。
この結果、たとえば、N2のベトナム人と、N1の中国人がいて、会話をするとN2のベトナム人の方が、スムーズに会話ができる、ということが起こりえるのです。
4.あの国の外国人が日本語を話すと…?
外国人の母語が何なのか?というのは、日本語の発音に大きな影響を及ぼします。
これは、日本人が「LとRの発音が苦手」という事実からも、想像できるのではないでしょうか?
ここでは、外国人の母語によって、日本語の発音にどのような特徴があるのかを、簡単に触れていきます。
(1)中国人の日本語発音
中国の方は、「長音・促音」の発話が苦手なことが多いです。
長音 ☞ 伸ばす音「ー」
促音 ☞ 小さい「っ」
日本語で「クリーニング」という場合、手拍子をして発話するとどうなりますか?
クッキーも、「ク・ッ・キ・ー」と4手拍子ですよね?
(2)ベトナム人の日本語発音
ベトナムの方は、「拗音」の発話になりやすいことが特徴です。
拗音 ☞ 小さい「ゃ・ゅ・ょ・ゎ」の音
日本に留学しに来たり、仕事をしに来たりするベトナム人とかかわるときには、注意が必要です。
拗音はとても幼い印象を受ける言葉ですが、決してベトナムの方が子供っぽいというわけではありません。
小馬鹿にしたような態度を取ることは、彼らのプライドを傷つけますし、トラブルの元になるので絶対にやってはいけませんよ。
5.外国人の日本語力ってどれくらい? ~まとめ~
■ 一部の優秀な外国人は、ネイティブレベルの日本語力になる。
☞逆に、ほとんどの外国人は、ネイティブレベルには到達しない
■ 多くの外国人は、1年程度で日常会話は普通にこなせるようになる
☞これより先は、発音の正確性で成長力が変わってくる
■ 日本語の発音は、国によって傾向がある
いかがでしたか?
ネイティブレベルの日本語力を身に付ける方もいますが、非常に難しいことがお分かりいただけたと思います。
逆に、日常会話レベルであれば、どんな外国の方でも普通に身に付けることが可能です。
日本語力を向上させるためには、正確な発音が必須なのですが、発音を指摘されることを嫌う外国人は非常に多いです。
柔軟性を持ってもらえれば、その外国人の日本語力は飛躍的に向上していくでしょう。
今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございました!