国際結婚で生まれた子供には、自分の意志で国籍を選ばせてあげたい!
国際結婚をしたご夫婦のほとんどは、そのように思われると思います。

…そもそも、あなたのお子さんは重国籍者として生まれてくるのですか?
お子さんの国籍に関して、よくあるパターンは次の2つです。
- 子供が重国籍だと思ったら、実は違っていた!
- 正しい手続きを踏まなかったため、重国籍にならなかった!

この記事では、国際結婚をして生まれた子供を重国籍にできる方法をお伝えしてきます。
◆ 子供が重国籍になる3パターンって?
◆ 複数の国籍を取得するうえで、注意すべきこととは?
◆ 日本国籍を喪失するケースがあるって、本当なの?
1.国際結婚した子供の日本国籍取得
日本は両系血統主義という考え方を採用しています。
両系血統主義とは、両親のうちどちらかがA国籍であれば、生まれてきた子供もA国籍を取得できるという考え方です。生まれた場所は関係ありません。
つまり、日本人と外国人の婚姻の場合、子供はかならず日本国籍を有して生まれてくることになります。
国際恋愛で未婚の場合には、その子は日本国籍を取得することはできません。未婚の子が日本国籍を取得するためには、日本人親の認知が必要になります。
2.国際結婚した子供が多重国籍になる3つのパターン

【海外出産1】血統主義のパートナーの国で子供を産む
日本以外にも、血統主義の国は多いです。
血統主義国同士の結婚の場合、パートナー国で出産すれば、子供はほぼ日本とパートナー国の重国籍として生まれてきます。
ただし、血統主義には2種類あるので注意してください。
①父母両系血統主義
②父系優先血統主義
父母両系血統主義とは、日本のように、両親のうち一人がA国籍を持っていれば、生まれてくる子供もA国籍を取得できるという考え方です。
一方、父系優先血統主義の場合には、両親のうち「父親がA国籍」であるときだけ、生まれた子供もA国籍を取得できるという考え方です。
日本人男性と父系血統主義国の外国人女性との結婚は、重国籍にならないので、注意が必要ですね。
父系優先血統主義を取っている国は、以下のような国々です。

【海外出産2】出生地主義の国で子供を産む
出生地主義とは、両親の国籍にかかわらず、ある国で生まれた子供に対して、その国の国籍を付与する考え方になります。
出生地主義の国で子供を産めば、両親の国籍に関係なく、その国の国籍を取得できます。
この場合、子供は日本と出生地の重国籍者として生まれてきます。
アメリカ合衆国、カナダ、アイルランド、グレナダ、ザンビア、タンザニア、ニュージーランド、パキスタン、バングラデシュ、フィジー、ペルー、ブラジルなど

血統主義と絡めれば、三重国籍以上も可能?
はい、可能です。
たとえば、日本人男性と中国人女性がアメリカで出産すれば、基本的には日本・中国・アメリカの三重国籍になります。※ただし、通常の生活を中国で送っている必要があります。
【国内出産】日本で血統主義のパートナーの子を産む
一番注意しなければいけないのが、このパターンになります。
原則として、血統主義国同士の両親から生まれた子供は、重国籍者になります。
しかし、各国には国籍法という法令があって、その中に細かい規定が定められているんです。
特に国外での出産(つまり、日本や第三国での出産)については、例外的な規定が定められていることがあり、この場合は重国籍にならない可能性があるので注意してください。
注意するべきパターンは、次の2つになります。
- 自国外で生まれた子供に対して、国籍を付与しないケース
- 自国外で生まれた子供については、申請によって国籍を付与するケース
①自国外で生まれた子には、国籍を付与しない
中国は父母両系血統主義で、日本と同じ考え方を取っています。
しかし、国外での出産については、次のような例外規定があるんですよ。
親となる中国人が、国外に生活拠点を持っていて、国外で出産した場合には、中国籍を付与しない。
つまり、日本で知り合った中国人との子供が日本で生まれたら、その子供は日本国籍しか取得できないことになります。
中国で知り合って子供が中国で生まれたら、その子供は日中の重国籍者になりますよ。
②自国外で生まれた子には、後日、申請によって国籍を付与する
ロシアは父母両系血統主義で、日本と同じ考え方です。
しかし、国外での出産については、次のような例外規定があるんです。
ロシア国外で生まれた場合には、自動的にロシア国籍を取得することはできず、申請によってロシア国籍を取得することができる。
これ、何が問題なの?申請すれば、重国籍にできるじゃん! て思われますよね。

第十一条 日本国民は、自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う。(e-Gov国籍法より)
日本でロシア人との子供を産んだ場合、ロシア国籍を取得すれば、日本国籍を喪失します。
つまり、子供は重国籍にはなりません。
ロシアでロシア人との子供を産んだ場合、日露の重国籍者になります。

国内での出産に限らず、かならずパートナー国の国籍法については、出産前に目を通すようにしましょう!
3.子供を多重国籍にするために必要な手続き

海外でお子さんが生まれた場合
①パートナー国の出生登録を行う
パートナー国で、子供の出生登録を行います。各国によって、手続き方法が異なりますので、かならず事前にチェックしておきましょう。
②パートナー国で、日本への出生届を提出する
出生日後3ヵ月以内(出生日を含みます)に、下記の場所へ日本の出生届を提出します。
- 赤ちゃんが生まれた国の日本大使館または領事館
- ご両親の住所地または本籍地(海外からの郵送も可)
※日本での手続きをする場合は、事前に市区町村役場に相談してください。
※修正ができませんので、生まれた国での手続きをおすすめします。
出生日後3ヵ月以内に手続きを完了しなかった場合、出生日にさかのぼって日本国籍を喪失します。
以下のものを提出して、手続きを完了してください。
- 出生届(☞外務省HP)
- 医師の作成した出生証明書あるいは官憲発行の出生証明書
- 日本語訳文(訳文には訳をした方の住所、氏名記載し押印)
- 届出人の印鑑(シャチハタはNG)
※国によって必要なものや枚数が異なります。在外公館にあらかじめ問い合わせておきましょう。
なお、出生届を提出する際には、かならず次に説明する”国籍留保”を行ってください。
③国籍留保
出生届を提出する際、国籍留保という手続きをしないと、日本国籍を喪失します。
海外で誕生して、外国の国籍を取得した赤ちゃんは、国籍留保をしなければ、出生日にさかのぼって日本国籍を喪失します。
国籍留保をすれば、日本国籍を選択する期限である22歳までの間、日本国籍を選択しないままキープすることができます。※つまり、重国籍状態が事実上容認されます。
国籍留保は、父母などの法定代理人が、在外日本公館に出生届を出すと同時に、日本国籍を留保する意思表示をすることで行います。
在外日本公館に備え付けてある出生届用紙の「その他」の欄に、「日本国籍を留保する」と印刷してあるので、そこに法定代理人が、署名捺印をするだけです。
当り前ですが、出生時に外国の国籍を取得していない場合には、国籍留保の必要はありませんよ!
国籍留保届をしなかった場合
20歳未満で、日本に住所があれば、届出によって日本国籍を取得することができます。
本人(15歳未満のときは,父母などの法定代理人)が自ら届出先に出向き,国籍取得の要件を備えていることを証する書類を添付し,書面によって届け出ることが必要です。
添付書類等の詳しい手続は,届出先となる法務局・地方法務局又は外国にある日本の大使館・領事館にご相談ください。(法務省:国籍Q&Aより引用)

日本でお子さんが生まれた場合
①日本の出生届を提出
正式に日本国から日本人として認識されるためには、出生届を提出し、ご両親の戸籍に編入される必要があります。

出生届は、出生後14日以内(出生日を含む)に提出する必要があります。
出生届の提出先は、次の通りです。
- 届出人の所在地(住所地のほか、里帰り先の一時滞在地も含む)
- 父または母の本籍地
- 子供の出生地
提出時には、以下のものを持っていきましょう。
- 出生届
- 出生証明書(出生届とセット。お医者さんからもらう)
- 届出人の身分証明書(通常お父さん)
- 届出人の印鑑(シャチハタNG)
- 母子手帳
出生届を提出する際、出生証明書を添付することが義務になっています。通常、出生届が左ページ、出生証明書が右ページになっているA3用紙で提出します。
出生証明書は、医師や助産師が書くことになっています。病院側が出生証明書を書いてくれ、出生届部分が空白の状態で手渡されます。
何もしなくても病院が出生証明書を書いてくれますので、あなたがすることは特にありません。
国内でお子さんが生まれた場合は、国籍留保の手続きは不要です。
②パートナー国の出生登録を行う
パートナー国の在日大使館または領事館で、子供の出生登録を行います。
各国によって、期限や提出物等が異なりますので、必ず事前に電話をして確認してください。
繰り返しになりますが、生まれた瞬間にパートナー国の国籍を取得できる国籍法の条文内容かどうかが重要です。
最悪、日本国籍を喪失しますので、本当に注意してください!

4.多重国籍どころか日本国籍取得不可or喪失…
ここまで、重国籍になる3パターンと、海外出生・日本出生の重国籍手続きについて確認してきました。
その中で、日本国籍を取得できなかったり、喪失したりするケースがありましたので、ここでまとめておきますね!
相手国の国籍は、生まれた瞬間に付与される性質のものかどうか?
☞生まれた瞬間に付与されていない場合、重国籍はあきらめましょう
3ヵ月以内に出生届を提出しましょう!
かならず国籍留保を行いましょう!
☞これらを行わないと、日本国籍を喪失します
5.子供が多重国籍になった後の注意点
日本では、多重国籍は本来認められていません。
日本の法律と海外の法律の違いから、やむを得ず重国籍になる状態を容認しているにすぎません。
日本の国籍法では、重国籍として生まれてきた子供は、22歳までにいずれかの国籍を選択し、重国籍の状態を解消しなければならないとされています。
重国籍の人は22歳までに何をすればいいのか?こちらの記事にまとめてあります! お子さんが重国籍になるなら、かならず目を通しておきましょう!

6.まとめ
- 原則として、どんなケースでも日本国籍は取得できる
- 重国籍になるのは、全部で3パターン!
- 海外出産か、日本出産かによって、手続き方法が異なる
- 最悪、日本国籍を取得できなかったり、喪失したりすることがある
- 22歳までに国籍を選択しなければいけない
いかがでしたか?
日本は原則として重国籍を認めない立場のため、子供を重国籍にするためには、いろいろと面倒があります。
しかし、22歳になるまでにお子さん自身の意思で国籍を選択できる状況は、人間的にも大きく成長できるでしょうし、人生の財産になると思います。

今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございました!