この記事では、次のような内容を解説します。
- 日本における戸籍制度の意義
- 戸籍の編製(日本人同士の結婚と国際結婚の対比)【一番重要】
- 諸外国における戸籍制度
「日本の戸籍制度」は、世界的に見るとかなり独特な制度です。
戸籍制度は元々中国から来たと言われていますので、中国系の外国人であれば、戸籍制度になじみがある可能性もあります。でも、ほとんどの外国人は、恐らく「戸籍ってなにヨ?」という状態ではないでしょうか。
とはいっても、日本では様々な生活場面で、戸籍謄本の提出などが要求されます。たとえ外国人であっても、「戸籍」に関する最低限の知識は持っておかなければいけません。
特に国際結婚して日本で生活する外国人にとって、戸籍に関する知識は必須でしょう。
この記事では、外国人のかたが最低限知っておくべき戸籍のルールをご紹介します。国際結婚する日本人の方にも、お読みいただきたい内容です。
1.日本における戸籍制度の意義
まず最初に、日本における戸籍制度とは、いったいどのようなものなのか?また、戸籍制度には、どういった意味があるのかについて、理解しておきましょう。
(1)戸籍ってそもそも何??
戸籍とは、個人の「出生から死亡」までの身分上の重要事項を明らかにするものです。また、親族関係を法的に証明するためにも必要とされます。
戸籍を見れば、その人の出生地、婚姻や離婚の経歴、子どもの出生、現在の家族関係などが、すべてわかるのです。
戸籍情報は、本籍地がある市区町村の役場で管理されています。これらの戸籍情報は、「戸籍謄本・戸籍抄本」という形で、法的書類としてアウトプットできます。
戸籍謄本等は、個人の「親族関係・身分関係」に関する公的証明書として、幅広く利用されています。
- 婚姻時・離婚時
- パスポート申請時
- 本籍地変更時
- 会社設立時
- 保険金・年金請求時 など
(2)外国人は日本の戸籍を持てないって本当??
「外国人は、日本の戸籍を持てない」という話を聞いたことがある人も多いと思います。
これは事実で、外国人は日本の戸籍を持てません。
ただ、外国人であっても「日本での婚姻・離婚・子供の出産・死亡」については、対応する役所に届出る義務があります。したがって、日本で行った重要な身分情報は「対となる日本人の戸籍情報」に記載されます。
どうしても戸籍情報が必要な場合は、契約者や代表者を日本人として、その日本人が戸籍謄本を提出することが一般的です。
ちなみに、外国人も住民登録が義務付けられています。外国人であっても、自分の「住民票」は取得できますので、一般的な書類提出で困ることは、ほとんどありませんよ。
(3)日本の戸籍が果たす3つの役割
ここまでをまとめる意味で、日本の戸籍が果たす3つの役割を確認しておきましょう。
日本における戸籍情報は、主に次の3つの役割を果たしています。
- 身分関係を明らかにする役割
- 親族関係を明らかにする役割
- 日本人であることを証明する役割
日本の戸籍には、いつどこで生まれ、いつ誰と婚姻をしたのか、といった身分関係を明らかにする役割があります。
また戸籍には、その人の配偶者や親子関係にある人、つまり親族関係を明らかにする役割もあります。
さらに、戸籍は日本人しか持つことができませんから、「戸籍がある=日本人である」と証明する役割も有しています。パスポート申請時に戸籍謄本が必要な理由は、日本国籍を証明するためなんですよ。
2.国際結婚すると、戸籍情報はどうなるの?
結婚をすると「戸籍の編製」という作業が行われます。
編製とは「作成」という意味で、要するに結婚した夫婦の戸籍が新たに作成されるのです。
婚姻時の戸籍の編製は、日本人同士の結婚と国際結婚では大きく異なる部分があります。
非常に大切な内容ですので、国際結婚するかたは、シッカリと理解しておきましょう。
(1)戸籍編製の三大原則
まず初めに、戸籍が編製される時の三大原則について、軽く触れておきます。
これが理解できていないと、なぜ日本人同士の結婚と国際結婚で、なぜ婚姻時の戸籍編製が異なるのかが、よく分からなくなってしまうのです。
戸籍編製の三大原則とは、次の3つのルールをいいます。
- 三世代戸籍禁止の原則【一番重要】
- 同氏同戸籍の原則
- 日本人限定の原則【二番目に重要】
ルール1 三世代戸籍禁止の原則
三世代戸籍禁止の原則とは、戸籍情報は「夫婦と、その未婚の子」を一つの単位として作成する、というルールのことです。
つまり、戸籍情報には「親・子の二世代」しか記載されず、「祖父母・孫」という三代目は記載されないのです。
少し分かりづらいので、具体例を使ってみましょう。
問題:あなたが未婚の日本人の場合、戸籍謄本には誰の情報が記載されるでしょうか?
答え:戸籍謄本には「あなたのご両親と、あなたご本人、そして結婚していないご兄弟・姉妹」の情報が記載されます(空欄を反転して答えを表示してください)。
どうでしょう?イメージは掴めましたか?
三世代戸籍禁止の原則がわかると、次の2つのことが理解できるはずです。
- 結婚と同時に、子どもは親の戸籍から除籍される
- 結婚すると戸籍がなくなるので、新しく戸籍を編製しなければならない
ルール2 同氏同戸籍の原則
同氏同戸籍の原則とは、ある戸籍情報には、同じ氏(名字)の人しか記載できない、といううルールのことです。
つまり、一つの戸籍に記載される人は、全員同じ名字ということなのです。
この名字は「戸籍の筆頭者の名字」に統一されます。
ルール3 日本人限定の原則
3つ目の原則は、日本人限定の原則です。
先ほどお話した通り、外国人は日本の戸籍を持つことができない、という内容です。
つまり、外国人が戸籍の筆頭者になったり、入籍(ある筆頭者の戸籍に入ること)したりすることはできないのです。
(2)【参考】日本人同士が結婚した時の戸籍の編製
国際結婚をした時の戸籍の編製を見る前に、参考として日本人同士の結婚のケースを見ていきましょう。これが分かっていると、国際結婚の戸籍について、理解しやすくなります。
では、ある日本人男性(一人っ子、初婚)が、ある日本人女性と結婚する例で、戸籍の編製について考えていきます。
日本人であれば、初めて結婚する段階では、かならず自分の両親の戸籍に入っています。
先ほどの繰り返しになりますが、戸籍情報は「夫婦と、その未婚の子」を一つの単位として作成されていました(三世代戸籍禁止の原則)。したがって、この男性の戸籍情報は、「ご両親とご本人」となっているはずですね。
今回、この男性は日本人女性と結婚することになりました。
結婚を機に「未婚の子」ではなくなりますので、ご両親の戸籍から除籍されることになります。
…そうなんです!
日本人同士が婚姻することで、新たに「夫婦」が誕生しますから、日本人男性と日本人女性の新しい戸籍が編製されるのです。
夫と妻のどちらを戸籍筆頭者とするかは、婚姻届により届け出ます。以降、夫婦の姓は、戸籍筆頭者の氏で統一(夫婦同姓)されることになります。
(3)国際結婚した時の戸籍の編製
では、いよいよ本題の「国際結婚した時の戸籍編製」について、確認しましょう。
とはいっても、あまり難しく考える必要はありません。
国際結婚を機会に、両親の戸籍から除籍される、という部分までは、まったく同じです。
では、両親の戸籍から除籍された後、どうなるのかについて見ていきます。
両親の戸籍から除籍されるということは、日本人の戸籍がなくなるということです。したがって、新しい戸籍を編製して、新しい筆頭者を立てなければいけません。
その際、外国人の配偶者は日本国籍を持っていませんので、新しい戸籍に入籍することもできなければ、当たり前ですが筆頭者になることもできません。
では、どのような戸籍が編製されるのかというと、国際結婚の場合には、日本人を筆頭者とした単独の戸籍が編製されるのです。つまり、結婚した日本人ひとりだけの戸籍(連れ子などの事情がなければ)になるということです。
外国人と婚姻したという情報はどこを見れば分かるの?
ご安心ください。
国際結婚した場合、外国人は入籍(戸籍に入ること)できないのですが、日本人の単独戸籍の中にある「身分事項」という欄に、外国人との婚姻に関する情報が記載されるのです。
従って、戸籍謄本等の信頼性や有用性は、日本人同士の結婚と同等に担保されています。
国際結婚すると、身分事項の婚姻欄には、以下の4つの情報が記載されます。
- 外国人との婚姻日(婚姻届が受理された日=戸籍編製日)
- 外国人配偶者の氏名(住民票登録の氏名)
- 外国人配偶者の国籍
- 外国人配偶者の生年月日
国際結婚した日本人(外国人妻との間に子一人)の戸籍謄本例
まとめますと、国際結婚をしたケースでは、戸籍編製の流れは、以下のようになります。
♥国際結婚後して生まれた子供の戸籍と名字については、別記事にまとめました。
子供の戸籍について知りたいかたは、こちらの記事もお読みください。
関連記事 国際結婚カップルの子供の名字はどうなるの?戸籍はどうなる?
3.国際結婚の戸籍編製に関連する2つのポイント
国際結婚をすると、日本人の単独戸籍が編製されることは、お伝えした通りです。
それ以外に、国際結婚の戸籍編製に関して、知っておいた方が良いポイントを、2つご紹介いたします。
(1)国際結婚では、何もしないと『夫婦別姓』になる
国際結婚では、何も手続きをしないと、夫婦別姓になります。
日本人であるあなたは、婚姻に伴って単独戸籍が新たに編製されますよね。単独戸籍に記載される姓は、今まで名乗っていた日本姓の名字です。
つまり、婚姻後も今までの名字と変わることはありません。
一方で、外国人配偶者は、そもそも日本の戸籍を持つことができません。したがって、婚姻に伴う姓名の変更は行われず、住民票に記載したファミリーネームを、婚姻後も継続して使い続けることになります。
日本人同士の結婚であれば、婚姻時に戸籍筆頭者を決めて、夫婦の名字を戸籍筆頭者の姓に合わせます(夫婦同姓)が、国際結婚には、その概念がないということです。
従って、国際結婚では、夫婦別姓が原則となるのです。
♥国際結婚でも夫婦同姓にできるテクニックをご紹介します。
外国人と同じ名字を名乗りたい、というかたは是非お読みくださいね。
関連記事 国際結婚でも夫婦同姓にできるの!?知らないと後悔する3つの方法
(2)新しい本籍地は、なるべく『居住地』で登録しよう
国際結婚で戸籍編製される際、本籍地はなるべく「居住地」で登録しましょう。
本籍地とは、戸籍を管理する市区町村のことをいいます。
国際結婚であっても、婚姻をする際には、各市区町村に「婚姻届」を提出します。「婚姻届」には、二人で選んだ「本籍地」を記載しなくてはなりません。
本籍地は、任意の場所を登録できますので、例えば「二人の思い出の地」や、極端な話、「皇居の所在地」などを本籍地として登録することもできます。
ただ、注意が必要なのが、「本籍地=戸籍の管理地」ですので、戸籍謄本や戸籍抄本は、本籍地を管轄している市区町村でなければ、発行してもらえないという点です。
国際結婚では、結婚をした後も、外国人配偶者にかかる法的な手続きが非常に多くあります。手続きに戸籍謄本や戸籍抄本が必要なケースも少なくありません。
結婚後のことを考えると、居住地と新しい本籍地は、なるべく同じ場所とした方が、いざという時に便利でしょう。
4.【参考】日本以外の国での戸籍制度の導入状況は?
ここでは、海外における戸籍制度の運用状況について、軽く触れておきます。
結論からいうと、日本と同様の意義・制度で戸籍制度を導入しているのは、「台湾」だけです。韓国も昔は採用していましたが、2008年に廃止しました。
各国で戸籍に代わるような制度はありますが、日本と同様の意義・制度ではありません。
5.国際結婚で知っておくべき戸籍の知識 ~まとめ~
- 国際結婚すると、両親の戸籍からは除籍される。
- 新しい戸籍が編製されるが、外国人配偶者が戸籍に入ることはない。
- 外国人配偶者の情報は、「身分事項」の欄に記載される。
- 国際結婚の場合は、原則、夫婦別姓である。
- 本籍地は、居住地と同一にしたほうがよい。
いかがでしたか?
この記事では、国際結婚する人が知っておくべき戸籍のルールについて、シンプルにまとめました。
この記事の内容が理解できれば、国際結婚の際に戸籍関係で困ることはないはずです。国際結婚をした後、ご夫婦の姓(名字)をどうするのかについても、この機会に考えてみると良いかもしれませんね!
今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございました!