まずは、お子様のご生誕、本当におめでとうございます!
ぜひ、明るく幸せな未来を築いてくださいね!
さて、赤ちゃん誕生の感動も収まっていないとは思いますが、さっそく赤ちゃんの国籍などに関する手続きを済ませなくてはいけません。
出生届や国籍手続きなど、国際結婚は日本人同士の結婚に比べて、多くの法的手続きをこなさなければなりません。
とくに国際結婚で海外出産をする場合には、日本国籍を喪失する(取得できない)可能性もあるので、細心の注意が必要です!
重要なポイントは、お子さんが生まれてから行う手続きを、きちんとリスト化して、頭の中をクリアにすることです。
「何をすればいいのか、ぜんぜんわからない!」
そんな方もご安心ください。
海外でお子さんを出産する場合の全体像を、ゼロからわかりやすく解説していきますよ。
◆ 生まれてきたお子さんの国籍への理解は大丈夫?
◆ 海外で子供が生まれたときの手続きは、何をどうすればいいの?
◆ 多重国籍について、注意点はある?
1.海外出産で生まれてくる子供の国籍は?
結論だけ確認したい! という人は、こちらをクリックしてください!
(1)両親のうち片方が日本人なら、子供も日本国籍!
父母両系血統主義とは、父親か母親がA国の国籍を持っているとき、生まれてくる子供もA国の国籍をもって生まれてくるという考え方です。
つまり、日本人と外国人の国際結婚カップルから生まれるダブルの子供は、かならず日本国籍を持って生まれてくるということです。
子供がどこの国で生まれたのかは関係ありません。海外で出産しても、日本国籍をもっていますから、ご安心くださいね!
子供が日本国籍を有するためには、外国人パートナーと婚姻している必要があります。未婚の子が日本国籍を取得するためには、日本人親の認知が必要です。
(2)パートナー国の国籍法と、出産する国の国籍法【重要】
基本的な考え方
- 父母両系血統主義 ☞両親どちらかがA国籍なら、子もA国籍 +日本国籍
- 父系優先血統主義 ☞父親がB国籍なら、子もB国籍 +日本国籍
- 出生地主義 ☞生まれた場所がC国なら、その子にC国籍 +日本国籍☞別途はのちほど説明(クリックでジャンプします)
①の国のパートナーと結婚したら、基本的にお子さんは二重国籍になりますね。
②の国のパートナーと結婚したら、あなたが女性なら、お子さんは二重国籍になります。
③はのちほど説明します。
パートナーの国以外で、海外出産するときは要注意!
各国には、”国籍法”といわれる法律(呼び名は違うかもしれませんが)があり、子供の国籍がどうなるのかなどのルールが規定されています。
だいたい法律には、原則と例外があるのですが、じつは国籍法でも海外出産の場合には、例外的な考え方がとられることが多いのです。
たとえば、ロシアは原則として、父母両系血統主義です。
ロシアの国籍法では、両親のうち一人でもロシア国籍を有していれば、生まれてくる赤ちゃんは自動的にロシア国籍を取得できます。
ここまでは、日本と同じですね。
しかし、例外があって、もしも赤ちゃんが生まれた場所がロシア国外ならば、自動的にロシア国籍を取得することはできません。この場合には、別途申請することでロシア国籍が取得できます。
中国も原則として、父母両系血統主義です。
しかし、中国国外での出産は、以下の注意書きがあります。
- 中国国籍の親が、中国国外に定住している
- 子供が生まれた瞬間に、中国以外の国籍を取得している
これに該当してしまうと、生まれてくる赤ちゃんは、中国国籍の取得ができません。
日本にもある”特殊なルール”
じつは、日本の国籍法にも、とっても大切なルールがあります。
日本は父母両系血統主義でした。両親のうち1人でも日本人なら、その子は自動的に日本国籍を取得できましたよね!しかも、生まれた場所は関係ありませんでした。
しかし、日本の国籍法で注意しなくてはいけないことがあります。
それは、自分から進んで他国の国籍を取得することはできないということです。もし、他国の国籍を自発的に取得してしまうと、日本国籍を喪失します(国籍法第11条)。
非常に大切な考え方です!!↓
日本は、原則として重国籍を認めていません。
日本と外国の法律によって、不可避的に重国籍になった場合にのみ、重国籍を認めるという立場なのです。厳密には『重国籍を認める』ではなく、22歳までにどの国籍を選ぶのか、『時間的猶予を与える』という解釈になります。
ですから、生まれた瞬間には日本国籍しかないのに、自分の意志で別の国の国籍を取得すると、日本国籍を喪失してしまうのです。
Q. 日本人とロシア人の子供が、日本で生まれた場合に、その子供の国籍はどうなると思いますか?
このケースでは、生まれた瞬間に取得できる国籍は、日本国籍だけになりますよね?
もし、ご両親が何も知らず、ロシア大使館に行ってロシア国籍を取得すると、お子さんは日本国籍を喪失してしまうのです。
日本とロシアの二重国籍の子供だと思っていたら、気が付いた時には、『ロシア国籍だけになっていた』という事例が、実際に起こっていますよ。
(3)【まとめ】結局なにに気を付ければいいの??
日本人と外国人のパートナーが国際結婚して、『パートナーの国でお子さんを出産する』分には、日本国籍とパートナー国籍の二重国籍になります。
注意が必要なのが、『パートナーの国以外』で出産する場合です!この場合には、かならずパートナー国の国籍法を調べてください。
(4)【参考】出生地主義
出生地主義とは、出生地主義を採用する国で生まれた子供については、両親の国籍は関係なく、その国の国籍が取得できるという考え方です。
アメリカやカナダ、ブラジルなどでは、出生地主義が採られています。
たとえば、国際結婚して中国に居住する日中カップルが、たまたま旅行に行ったアメリカで赤ちゃんを出産すれば、その子供は三重国籍になります。
国際結婚で生まれてくるお子さんの国籍については、こちらの記事で詳しくまとめています。
2.海外で子供が生まれたときの出生手続き
(1)その国の方法にしたがって、出生の届出を行う
まずは、赤ちゃんが生まれた国(おそらくあなたのパートナーの国)に、出生の届出を行ってください。その国によってルールは異なりますので、事前に調べておきましょう。
(2)出生証明書(仮)を作成してもらう
(1)の手続きをした国から、官憲発行の出生証明書(その国によって呼び名は異なる)を作成してもらいます。
もしくは、出産した病院の医師に出生証明書を作成してもらってください。
(3)翻訳文を作成する
(2)の書類は、日本語に翻訳する必要があります。翻訳文には、訳をした方の住所と氏名を記載し、押印をしてもらってください。
(4)日本の出生届を提出する
ここで、日本の出生届を以下のいずれかに提出します。
- 赤ちゃんが生まれた国の日本大使館または領事館
- ご両親の住所地または本籍地(海外からの郵送も可)
※日本での手続きをする場合は、事前に市区町村役場に相談してください。
以下のものを提出して、手続きを完了してください。
- 出生届(☞外務省HP)
- 医師の作成した出生証明書あるいは官憲発行の出生証明書
- 日本語訳文(訳文には訳をした方の住所、氏名記載し押印)
- 届出人の印鑑(シャチハタはNG)
※国によって必要なものや枚数が異なります。在外公館にあらかじめ問い合わせておきましょう。
出生届の提出は、出生日後3ヵ月以内(出生日を含みます)に行ってください。
出生日後3ヵ月以内に手続きを完了しなかった場合、出生日にさかのぼって日本国籍を喪失します。
子供の名前に使える文字
お子さんの名前に使える文字の種類は、次の4種類です。
- ひらがな
- カタカナ
- 常用漢字+別表第二に掲げる漢字
- 長音符(”―”と伸ばす音。ただし、一文字目には使用不可)
アルファベットやハングル文字などは、利用できませんので、注意してくださいね。
国籍留保
おそらく、お子さんは生まれた段階で、日本国籍以外の国籍を取得していると思います。
この場合、出生届を提出する際、国籍留保という手続きをしないと、日本国籍を喪失します。
海外で誕生して、外国の国籍を取得した赤ちゃんは、国籍留保をしなければ、出生日にさかのぼって日本国籍を喪失します。
国籍留保をすれば、日本国籍を選択する期限である22歳までの間、日本国籍を選択しないままキープすることができます。※つまり、重国籍状態が事実上容認されます。
国籍留保は、父母などの法定代理人が、在外日本公館に出生届を出すと同時に、日本国籍を留保する意思表示をすることで行います。
在外日本公館に備え付けてある出生届用紙の「その他」の欄に、「日本国籍を留保する」と印刷してあるので、そこに法定代理人が、署名捺印をするだけです。
当り前ですが、出生時に外国の国籍を取得していない場合には、国籍留保の必要はありませんよ!
日本の役場にある出生届の「その他」欄には、「国籍留保」の欄がありません。あなたご自身で記入する必要がありますので、注意してください。
国籍留保届をしなかった場合
20歳未満で、日本に住所があれば、届出によって日本国籍を取得することができます。
本人(15歳未満のときは,父母などの法定代理人)が自ら届出先に出向き,国籍取得の要件を備えていることを証する書類を添付し,書面によって届け出ることが必要です。
添付書類等の詳しい手続は,届出先となる法務局・地方法務局又は外国にある日本の大使館・領事館にご相談ください。(法務省:国籍Q&Aより引用)
3.海外出産した子が、日本帰国のためにパスポートを取得する手続き
お子さんのパスポートの申請は、基本的には在外公館で行います。申請に必要なものは、次の通りです。
在外公館の一覧は、こちらのページ(外務省HPへ飛びます)へ!
ちなみに、戸籍謄本の取得は、次のいずれかの方法によって行います。
- 直接日本に取りに帰る
- 本籍地の市区町村役場へ、郵送で送ってもらうよう依頼する
- 日本で代理人に取りに行ってもらう
市区町村によっては、戸籍謄本の郵送を行っていない地区もあります。また、代理人が持参するものも、地区によって異なります。
4.【帰国後】海外出産も出産一時金を取得できる?
あたりまえですが、これまで国民健康保険料を支払ってきており、日本に住民票があって、かつ、居住の事実もある場合に限ります。
出産の時だけ日本に住民票を移して…という不正を行う日本人が後を絶たず、最近ではチェックが厳しくなっています。
5.海外出産で重国籍になったお子様…22歳までに国籍の選択を!
日本では、2つ以上の国籍を取得する重国籍が禁止されています。
もしも、お子さんが重国籍になった場合には、22歳までにどれか一つの国籍を選択しなければなりません。
国籍留保をしたことで、重国籍が認められたのではなく、国籍を選択するための時間的猶予が22歳まで与えられたと解釈してください!
重国籍の人は22歳までに何をすればいいのか?こちらの記事にまとめてあります!
6.まとめ
両親のうち、一人でも日本人なら、子供も日本国籍
生まれたときに、外国籍も取得していれば、子供は重国籍
☞誕生後に外国籍を取得しようとすると、日本国籍喪失
【海外出産】重国籍になったら、国籍留保を行う
☞3ヵ月以内の出生届未提出、国籍留保なしは、日本国籍喪失
☞22歳までに国籍を選択する必要(罰則はなし)
パスポート取得、出産一時金、児童手当なども手続きを進める
いかがでしたか?
特に重要な点は、子供の国籍に関する内容です。
親の手違いでお子さんが大変な苦労をするのは、やっぱりつらいですよね。
少し面倒くさいのですが、必ずパートナー国の国籍法には目を通すようにしましょう。
今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございました!